JCHO横浜中央病院が目指す地域包括ケアにおける地域医療への貢献
横浜中央病院はJCHO(Japan Community Health care Organization)=地域医療機能推進機構という名を冠しており、横浜市中区における地域医療に貢献する使命を担っています。当院では総合診療科と地域包括ケア病棟という他院ではあまり見られない仕組みを用いて、この使命を果たそうと考えています。
総合診療科について
横浜中央病院における総合診療科は一般的な総合診療科ではありません
当院では平成30年4月から新しい診療科として総合診療科を立ち上げさせていただきました。総合診療科と聞いて、多くの皆様の頭に浮かぶのはNHKの「ドクターG」という番組ではないでしょうか。見落としていた症状をヒントに、どこの病院に行っても分からなかった病気を診断していくという、医療版の謎解きバラエティー番組です。世間一般に言われる総合診療科とは、このドクターGのような診断学のプロフェッショナルを指す名称です。
しかし、横浜中央病院における総合診療科は一般的なそれとは異なる科となっています。当院の総合診療科が目指しているのは、医療面のみならず、患者様の社会面や環境面などの介護療養生活までも含めて総合的に診療していくことです。
具体的な診療内容としては、認知症に対する社会調整や老衰により食事摂取困難に対する栄養ルートの選択、癌ターミナル患者の癌性疼痛のコントロールや看取り場所の再検討などといった、医療・介護・福祉といった多方面からの介入が必要な患者様を診療させていただいています。このような複雑な背景をお持ちの患者様には、医師・看護師・薬剤師・ソーシャルワーカー・栄養士・ケアマネジャーなど多職種による連携の下で、時間をかけて患者様やご家族様に寄り添った関わり方を考えていくことが重要となってきます。
地域で皆様がご診療の中にも、時間の限られた外来診療や在宅診療では十分に対応をすることが難しい患者様がおられるかと思います。そのような患者様がいらっしゃいましたら、是非お気軽に当院の総合診療科にご相談いただければと存じます。
現在、総合診療科は部長の藤川(消化器内科部長兼任)と神田、小澤の医師3名体制で診療に携わらせていただいております。
当院で総合診療科が立ち上がった背景には、地域包括ケア病棟という特殊な機能を持った病床の存在が大きく関わっています。
地域包括ケア病棟について
当院の病床は急性期病棟200床と地域包括ケア病棟50床から成っています。世の中で地域包括ケアの推進が叫ばれ始めてからかなりの時間が経ちました。しかし、地域包括ケア病棟の役割や具体的な機能については、まだ充分に認知されていないように思われます。そこで、3つの地域包括ケア病棟の活用方法と、急性期病棟と地域包括ケア病棟を比較した上での地域包括ケア病棟を利用するメリットについてご説明します。
3つの地域包括ケア病棟の活用方法
①在宅調整&リハビリ
1つ目は急性期入院から療養環境(在宅や施設)へ復帰する前のワンクッションとして地域包括ケア病棟を挟む使い方です。急性期入院で落ちたADLに対してリハビリを行ったり、介護サービスを新たに組み直したりと在宅復帰の準備期間をしっかり確保することで、退院後の療養生活が破綻することを予防することが可能です。他院の急性期病床で治療を終えられた方を転院で受け入れることも行っています。現在、当院ではこの方法での地域包括ケア病棟の利用が最も多くなっています。
②早期治療(軽症疾患)
2つ目は、早期治療のために地域包括ケア病棟を使用する方法です。在宅診療において軽症なうちに早期入院して治療することで、重症化を予防し、ADLの低下を防ぎます。この目的で使用するに当たり、地域包括ケア病棟は入院のハードルを急性期病棟への入院基準と異なり、むしろ軽症ほど受け入れ易いと言えます。
③レスパイト入院
最後に、3つ目の方法としてレスパイト入院が挙げられます。レスパイトには、小休止という意味があります。レスパイト入院とは、主介護者(=介護する側の人)のための入院です。患者様本人の状態が悪化していなくても、主介護者が介護困難となる事情が生じた場合に入院を受け入れています。例えば、医療依存度が高くてショートステイでの受け入れが難しい場合や、介護疲れで共倒れになってしまうリスクが生じたり、主介護者が入院することになった等の理由で緊急避難が必要となった場合が挙げられます。他にも、年末年始やゴールデンウィークで介護サービスが十分に利用できない時にもレスパイト入院は利用することが可能です。通常、ショートステイの予約は何ヶ月も前に埋まってしまうことが多く、緊急で利用することは難しいのが現状ですが、地域包括ケア病棟を利用してのレスパイト入院であれば、早期での対応が可能であり、多くの医療行為に対応可能です。
急性期病棟と地域包括ケア病棟の比較
・目的
最も大きな違いは、病棟の目的の違いにあります。急性期病棟の目的は治療です。一方で、地域包括ケア病棟は、軽い治療~療養生活へ繋げることが目的になります。これは、3つの活用方法を思い出していただければ、理解していただけると思います。
・看護体制
次に比較したいのが、看護体制です。急性期病棟は7:1看護(1人の看護師が7人の患者様を受け持つ)なのに対して、地域包括ケア病棟は入院患者様の重症度に合わせた13:1看護の看護体制となっています。
・リハビリ
地域包括ケア病棟では1日3単位(1単位=20分)以上リハビリを行うことが可能な患者様にしか理学療法士がついてのリハビリは継続できません。これは、地域包括ケア病棟の施設基準として一定以上の単位数を維持しなければならないという規則があるためです(但し、回復期リハビリ病棟とは異なり、一定単位のリハビリとなることをご了承ください)。理学療法士によるリハビリが不可能な患者様には、トイレや食事で移動が必要な際に看護師がサポートする「生活期リハビリ」を行わせていただいております。
・入院期間
最後に入院期間についてです。急性期病棟はなるべく早期の退院が求められます。それに対して、地域包括ケア病棟は累積60日間までの入院が可能です。例えば、レスパイト入院で14日間入院した場合、次回の入院で利用できる日数は60-14=46日間になるということです。60枚の回数券を1日1枚使って入院すると考えてもらえれば良いかと思います。この回数券が無くなってしまった段階で地域包括ケア病棟での入院期間は限度を迎えます。
ただし、60日の入院可能日数が復活する条件が3つあります。1つは、3ヶ月間のインターバルを空けることです。前もって予約したショートステイなどを上手く使って地域包括ケア病棟を3ヶ月間利用しなければ、60日が復活します。2つ目は、病状が悪化して急性期病棟に入院した場合です。ADLの低下や認知症の進行など在宅調整が再度必要となる可能性があるため、60日が復活します。3つ目ですが、病状の急激な悪化が生じる場合があるため、癌の患者様に限っては1ヶ月間のインターバルで60日が復活します。
地域包括ケア病棟を利用するに当たって
地域ケアサービスセンター内の療養支援科にお気軽にご相談ください
地域包括ケア病棟は今後の超高齢化社会において、また在宅診療が増えていく中で、上手く利用できれば地域医療と介護に貢献できる病棟だと考えております。その価値をより高めるために、当院では総合診療科を立ち上げさせていただきました。
当院の地域ケアサービスセンター内に療養支援科という部署を窓口として設置しております。現在、師長の矢郷と鈴木(雅)、坂口の看護師3名体制で地域包括ケア病棟の利用、総合診療科への依頼、地域の医療・介護、その他諸々について何でもお気軽にご相談いただけるようになっております。
何かお困りのこと、お問い合わせ等ございましたら、是非とも地域ケアサービスセンターにお電話いただければ幸いです。
地域ケアサービスセンター直通 045-681-9534
地域包括ケア病棟のスタッフ
退院後の生活が不安なく過ごせるよう、退院支援を行います。
当院の地域包括ケア病棟(50床)
4人部屋(8室)2人部屋(3室)6人部屋(1室)個室(6室) |
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専用病棟リハビリ室 |
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